この作品は、イディッシュ語の「オーバーコートをもっていた」という歌が出典元。
物を大切にするというユダヤ人文化の教えが、詰まっています。
因みに、イディッシュ語とは、世界中で400万人のアシュケナージ系ユダヤ人によって使用されている言語のこと。
この作品は、1992年ですが、2000年にシムズ・タバックが同じ出典元の作品「ヨセフのだいじなコート」を描き、コールデコット賞を受賞しています。
タバックの作品の特徴は、仕掛け絵本になっていたこと。
ヨゼフのコートに穴が開いているのですが、その穴の部分に凹凸をつけてあるのです。
最初は、大事なコートなので、継ぎを当てていましたと始まるのですが、次のページでは、コートをジャケットに作り変えています。
その繰り返しが、どんどん続くという物語なのですが、作り変える部分の生地が仕掛けになっているので、子供も釘付けにするはずです。
また、絵も、水彩絵の具、グワッシュ、色鉛筆、インク、コラージュで製作しましたとあるように、作者が思いっきり楽しんでいるようで、見所満載でした。
それに比すると、この作品は、絵が物語る作品と言えそうです。
ストーリーは、同じく、おじいさんが作ったブランケットが古くなったので、おじいさんが次から次へと作り変えていく様を描いた物。
ブランケット→ジャケット→ベスト→ネクタイ→ハンカチ→ボタンと作り直していくのですが、その描写が実に見事。
二階建ての建物の断面を描く手法が取られているのですが、おじいさんばかりでなく、その人間模様も詳細に描かれているのです。
生活様式が異なるのでちょっと難しいシーンもありますが、その生活感のある絵は、実に楽しい物です。
しかも、地下にはネズミの一家も住んでいて、おじいさんのブランケットの切れ端で、服とかカーテンとかを作る様が描かれており、2度美味しいといった感じです。
良く出来たエンディングも納得もので、何度読んでも新しい発見のあるオススメの作品です。
個人的には、タバックの作品よりも楽しめました。