与田凖一さんの文に、杉浦範茂さんが絵を描いた作品です。
絵本を開いて、左右のページの絵が逆さまになっているのにビックリしました。
右側のページだけを読んでいくと、最後のページでくるっと絵本をひっくり返すことで、後半へと続いていくんです。奇想天外なアイデアは(装丁の仕事もされる)杉浦範茂さんによるものでしょうか。中表紙には、児童書「ルドルフとイッパイアッテナ」を思い起こすような、クロネコがネズミを追っかけている絵があり、いい味を出しています。
文を書いた与田凖一さんは、我が家では初めての作家さんですが、古典的な昔話などが多い方のようで、リズミカルな文章が特徴的です。目で追っただけでは気づかなったのですが、息子に向かって声に出してみると、走るように滑らかに読めて、どんどん気分も乗ってきて楽しくなりました。
理不尽で自己中心的なおばあさんが、言う事を聞かない“こぶた”を柵の中に入れようとしますが、誰に頼んでも断られて悪戦苦闘する様子が、息子もだんだん面白くなってきたようで、どこまでも失敗しそうなやりとりの繰り返しにニンマリしてきました。
前半は、おばあさんが失敗してばかりで、さっぱり終わり方が読めません。波が引ききったところへ、後半一気に話しが動き出し、前半の反動が津波のように押し寄せて来て、僕の舌もハイスピードで回り出し、エンディングへまっしぐらという感じでした。折り返しで38ページの長編追いかけっこを読み切ったという達成感もありました。楽しい作品ですが絶版のようで残念です。是非ハードブック化して欲しいものです。