2010年度のコールデコット賞受賞作品。
表紙に題はありません。
ライオンの絵とネズミの絵があり、その絵の間に&があるという、実に洒落た表紙となっています。
ジェリー・ピンクニーは、2000年に「The Ugly Duckling (未訳)」でコールデコット賞オナー賞を受賞しています。
言わずと知れたイソップ物語の再話。
誰でも知っている物語なので、どんな物語にしたのだろうと思いきや、何と文字のない絵本に仕上がっていました。
あるのは、擬音語が少しあるだけです。
正に、絵が物語る絵本です。
最初開くと、大草原に沢山の動物達がいて、ライオンはアクビをしています。
このアクビがポイントで、これから昼寝というタイミングなのでしょう。
次のページは、一転して小さな動物の世界。
大きな動物の足跡にネズミがいて、アリがえさを運んでいます。
ネズミがフクロウに追われるシーンがあったりして、弱い存在であることを示しているかのようです。
そのネズミが、寝ているライオンを起こしてしまい、捕まってしまいます。
でも、ライオンは、手のひらを広げネズミを逃がしてやるのです。
その出会いのシーンは、見開きで3枚にも及び、次のシーンは、それぞれの家族と一緒に描かれていて、絶妙としか言いようのない構成です。
ライオンが罠に掛かったシーンで、ネズミが助けに行くのですが、お互いが見つめるシーンが良いです。
ライオンの歪んだ口なんて、確かにこんな風に見えるのではないかと納得できるもの。
そして何と言っても、ライオンが罠から脱出できたときのネズミとの無言の会話が圧巻です。
ネズミがガッツポーズしているみたいに見えるのは、私だけではないはずです。
ライオンとネズミの息づかいさえも、聞こえてきそうな臨場感溢れる絵を満喫して、イソップの教訓を学べる素晴らしい作品です。
絵の力がこんなにも感じられる作品は、久しぶりです。
是非多くの人に感じて欲しい作品で、絶対のオススメです。
コールデコット賞は伊達ではありません。