購読している新聞のせいか、滝平二郎さんの絵は随分と昔からなじみがある。知っている絵は一つ一つが作品であり、とても味わいがある。そしてさりげなくとても情緒的な饒舌さを持っている。
しかし、絵本の中でストーリー性を持たせたとき、滝平さんの絵は様々に変化する。『八郎』とか『三コ』を見たときは、同じ滝平さんの絵かと思ったほど、骨太で力あふれる絵だった。物語の面白さは別として、絵には違和感をおぼえたものである。
滝平さんには滝平さんの世界がある。
文も絵も同じメンバーなのに、この『半日村』は滝平さんの存在がぐっと出てくる作品である(他の絵本は斎藤さんの文に、絵がついている感じだった)。ツボにはまったとでもいうのだろうか。
しかし、なじみのある画調でありながら物語を壊さないように繊細で控えめ、かつ物語を盛り上げるさりげなさを充分に発揮している。
山のために半日しか日の当たらない半日村。
一平は、山のてっぺんから土を運んで村の前の湖に落とす。
単純な繰り返しをバカにしていた子どもたちが仲間に入り、それを見てバカにしていた大人たちが仲間に入り、長い年月をかけて村は一日村に変化していく。
結果を急ぐ現代において、このような話は重要な作品だと思う。
子どもたちにとって、訓辞的な色彩もあるけれど、決して押しつけているわけではない。
それを支えているのが滝平さんの絵である。
私は、この物語とともに、この絵を子どもたちに伝えたいと思いました。