懐かしさと、何が問題で出版禁止になったんだろうという思いで読み直しました。
子どものころ親しんだこのお話は、トラが木の周りを走り回ってバターになってしまったことがとても印象的で心に残っているのです。
自分の学生時代のころ、絵本の中の差別問題、弱者蔑視問題が取りざたされて、この『ちびくろ・さんぼ』や『ピノキオ』などが取りざたされて絵本の不遇の時代があったと記憶しています。
「さんぼ」は黒人に対しての差別用語、黒人からすると奴隷制度を思い起こさせる忌み言葉だと知りました。
カルピスのシンボルマークが変わったのもその頃。
お話は、そんな差別意識とは全く関係ありません。
父親はジャンボ、母親はマンボ、そして子どもはサンボ。
サンボがさんぽに出かけた先に現れたトラ。
トラに順番に自分の持ち物をとられる羽目になります。
リズミカルでパターン的で幼児から楽しめるお話。
トラがバターに変わる展開や、それでホットケーキを作って食べる話、子どもの心をつかむ要素をもっている話です。
三人の食べたホットケーキの枚数もちょっと意味深で心に残っています。
この絵本を読みながら、絵本や児童書を大人の思想で捻じ曲げてはいけないことを思いました。
絵本の可能性を考えるときに、大人の統制や思想の押し付けではなく、子どもが自由に感じることが本読みにとってとても大切なことだと思いました。