「いすが にげた」 パパの声

イスが逃げ出すなんて、とどたばたナンセンスをイメージして読み始めたのですが、途中からしんみりとしてしまいました。
子どもたちが小さい頃に、だんなさんが作ってくれたイスです。
子どもたちの成長と、ご主人の亡くなるまでを見てきたイスです。
今独り暮らしになって、軒下でおばあさんがおばあさんがくつろぐために置かれたイスです。
家の外でじっとしているのが嫌になったのでしょうか。
イスとおばあさんが横になって空を見上げているシーンが印象的です。
そして、ラストは感動的でした。

おばあさんちの椅子が逃げ出した。
追いかけたおばあさん、ようやく椅子を捕まえます。
椅子を傍らに空を眺めながら、おばあさんは椅子との思い出を振り返ります。
そこには、お互いパートナーと言い合えるほどの歴史があり、
ジ〜ンときます。
この一件で、さらにその結束は強まったことでしょう。

絵はふざけた感じ？と思うかもしれないですが物語は、みなさんがレビューに書いてるように結構しんみりする内容です。確かに生まれてまだせいぜい五、六年の子供にはちょとわかりづらい所はあるかも知れませんが、きっと心に何か残るんじゃないかなあ。たまにはメッセージ色のある絵本を読ませたいと思っているのであれば、お勧めできる作品のうちのひとつです。

ある日とつぜん椅子が逃げ出し、
それを追いかけ捕まえたおばあさんが
ふと椅子と過ごした懐かしい日々を振り返る。

そんなお話とスズキコージさんの絵が組み合わさると
あら不思議、とても逞しい絵本になりました。
絵を読むから絵本と認識させてくれる絵本です。
お話も心温まる読後感が得られます。