たかどのほうこさんの作品の多くは、どこにでもありそうな日常が舞台で、そこで起こる不思議な体験は、自分の回りでも起きて欲しいなと思うようなお話しで、読後感がとても心地よいという印象です。
この作品は、まだ自然が多く残る小学校の生徒達と、自分達そっくりに化けるキツネ達との交流を描いたものです。
キツネが字を書く時に、“さ”を“ち”と逆さ文字にしてしまったり、ひらがなの一部を1年生で習う漢字に誤変換してしまったような怪文は、見るのと読むのではまた違った面白さがあります。
特にハルオが迷い込んだキツネ小学校の授業で、ヤマモトさんギツネが黒板に(“おいなりさんばかりを食べない”のつもりで)“オイなりちんバカりお、田びナイ”と書いたのは最高です。よくよく読むと間違い方にも「あぁなるほど」と納得してしまうんですね。
息子は、キツネの校長先生が「誰かに連れて行かれそうになったらどうするのかね?」との質問に対し、一人目の生徒が「ひっかく」と答えたところで反応し、次の子が「かみつく」と言った時にはゲチャゲチャ笑ってうけていました。
キツネ達の変身もどこか可笑しく、まだたまにパンツやシャツをうつろまえに着ていることのある息子ですが、ひょっとしてはキツネと入れ替わっては……いないだろうねぇ。
主人公が1年生で、漢字も1年生で習いそうなものばかりですが、一人読みで怪文を理解するには、高学年くらいが良いのかもしれないです。