ひとりぐらしのおばあさん。年々ひどくなるひざの痛みに耐えかねて、長年住み慣れた家を離れ、娘の所へ移る決心をします。思い出と共にずっと過ごした家。そして、5年前に亡くなったおじいさんのお父さんが遺した樹齢200年のけやきの大木。町のみんなを見守り、町の移り変わりをじっと見守ってきたそのけやきの木も切られてしまうことになりました。物語では描かれていないのですが、けやきの落ち葉は凄いです。おそらく、おばあさんはそれも1人で一生懸命掃除していたのではないでしょうか。おばあさんがいなくなってしまえば、空き家は取り壊され、新しい宅地かなにかにするためには、木も邪魔になるというわけです。(現在の町の様子が描かれたページでは、おばあさんの家だけが、新しい町並に埋もれていることがわかります。)
おばあさんは、大事なけやきの木の運命を未来へつなげようと、一計を案じます。
「わたしは、けやきです。(中略)どなたかわたしをもらってください。(後略)」という手紙を掲示しました。
けやきには町の人達にもたくさんの思い出がありました。みんなはあちこちから集まり、切り倒されるけやきを見つめ、それぞれ枝や幹を持ち帰ります。
この本は、人から読んでもらって知ったのですが、丁寧に切られて、だんだん小さくなっていくけやきの様子や、残った大きな切り株の年輪をいとおしそうに数えるおばあさんの場面は切なくて切なくて、嗚咽してしまいました。
でも、200年の命は、新しいたくさんの運命を得て、生き続けていきます。ああなるほどなあ、と安堵できる結末です。
暖かな文章、おばあさんの思いを綴る暖かな絵。是非御覧になってみてください。