2002年刊行。新潮社の「ありふれた手法」(1990年)、「凶夢など30」(1991年)を底本とし、短編17話を収録。
現代社会で生きる会社員、おとぎ話の王様、病院の診察室などを舞台に、登場人物たちがありえない人生を体験する不思議な話。
2021年に40歳を超えた大人が読んでも、面白い話ばかり。筆者の面白い物語を作る力に圧倒される。
80年代〜90年代ごろは、私は小学生くらいだったが、当時はやたらにオカルトが流行っていて、心霊番組などが堂々とテレビで放送されていたのを覚えている。その時代を思いださせるような、怪奇現象風の話が印象に残った。
毎回、このシリーズはSFや宇宙ものなどが印象に残るが(70年代ごろの時代の影響?)、今回は宇宙ものはなくて、地球の、日常生活のなかで、ちょっとしたきっかけにより、奇妙な体験をする羽目になる話が多かった。
心に残った話は、「現象」。動物や植物に対して、人間が気の毒に思うようになり、畜産業や動物実験などの仕事をどんどん放棄していく話。牛や豚がにっこり笑いかけたような気がすると、それを見た人間は相手に対して申し訳ない気持ちになって、仕事をする気がなくなるという。
今の時代は、食べ物や命を極端に粗末にしているから、こういう事態が起きたら、人類はちょっとはマシになるのかもしれない。
しかし、最終的には…