アメリカでも「The Mitten」という名前で翻訳されているという「てぶくろ」
ウクライナ民話だけあって、ストーリーもイラストも一風変わった不思議な印象を醸し出しています。
この絵本の魅力は、なんといってもストーリーの軽快さです。いろんな動物たちが次々とやってきて、てぶくろの中で一緒に暮らし始めます。
動物たちの軽快な受け答えは、とてもユニークで、自分のことを「おしゃれぎつね」や「きばもちいのしし」など、自己紹介をします。ウクライナ語を日本語に翻訳するとこういう単語になるのでしょうが、それがまた効果的に働いて、この物語の不思議な印象を強くしています。ただのいのししではなく、「きばもちいのしし」と表現することで、とても強そうな大きな体のいのししということが伝わってきますし、「おしゃれぎつね」と表現することで、ウクライナ地方の民族衣装をまとったきつねを思い浮かべることができます。
「おいおいねずみやかえるならまだしも、おおかみやくまは、入らないだろう」と読みながらついついつっこんでしまいがちですが、無理やり入ってしまうとことがまたまた不思議。てぶくろの中は、どんなふうになっているのだろうと想像力がかきたてられるのです。
また、てぶくろが一軒の家として、どんどん改装されていくのも魅力です。木の窓がついたり、デッキがついたり、はしごがついたり、煙突からは煙すら出ています。てぶくろの中では、暖炉でもあるのでしょうか。てぶくろの中が見たい!みんなが生活している様子をのぞいてみたいと、思ってしまいます。でもてぶくろの中が描かれていないことがまた、想像力を膨らませていいのでしょう。