村上春樹 による『The giving tree』の 日本語訳絵本。
ほんだきんいちろう訳本の絶版を受けて出版された。
とにかく原作に忠実な訳、という印象。
村上春樹訳だが、そんな色はほとんど出ていなく残念。
せっかくなのだから、春樹節を思いっきり炸裂させてほしかった。
(その点『急行北極号』はとんでもなく春樹で大好きである。)
ほんだ版の第三者的な視点とは変わって、木や少年の気持ちに寄り添っての読みになる。
個人的にはほんだ訳の方がおすすめ。
原書で木を指す“she”という語を受けて、木をはっきり女性として描いている。
その分「母親の無償の愛」の印象がかなり強くなった。
尽くすことが愛情表現になっている優しくて少し気弱な母親のイメージ。
原作の少し歪な雰囲気が良く出ている。
しかし、“but not really”を「〜なんてなれませんよね」としたのはこれまでの流れが壊れてしまったと思う。
少年がお金を欲しがるセリフを2回も重ねたところ(原書では1回のみ)、木が何もできなくて言った“I’m sorry”を「かわいそうに」と訳したところもイマイチ。
原書の英語は中学生レベルで簡単なので、そちらと読み比べてみると面白い。
【原書との比較】
・表紙カラーが原書よりも薄く黄緑になっている
・印刷が右側で5mmくらい切れている?(2頁目で顕著)
・タイトル・献辞のフォントも原書に忠実