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ホラー小説の皆川博子さんの初絵本。 その内容を宇野亜喜良さんが、いかにも宇野さんらしい幻想的でちょっと不気味なテイストで包み込んだ絵本です。 お姉さんのマイマイと、親にも見えないほど小さな弟のナイナイのお話。 マイマイは白馬に右目をつぶされたり、クルミの殻に弟のナイナイをこもらせたり、なにかフロイトかユングならば象徴性を語るような意味深そうな断片が出てきます。 右目に収められたクルミの中から、ナイナイは「夜のゆめ」を引きずり込んで、マイマイを悪夢の世界に連れ込みます。 それだけではなく、マイマイの心はクルミの中に閉じ込められてしまって、閉ざされてしまいます。 夢ならば早う覚めてほしいと思いますが、マイマイは(マイマイの体を借りて作者は)何かを語ろうとしているように思います。 「怪談えほん」とのことですが、怖さだけで読む絵本ではないような気がしました。
投稿日:2012/01/13
【内容】 少女マイマイは、ある日、小さな弟を見つける。父も母も小さすぎる弟は見えない。クルミの殻に弟を入れ、二人は森に行く。白い馬に右の眼を壊されたマイマイは、クルミを右目に入れるが…小さな弟と姉の、不思議な物語。 絵:宇野亜喜良 編集:東 雅夫 【感想】 精神の異常を感じさせる、不気味な話でした。言葉が詩のようによく練られていて、一つの言葉からいろいろなものを暗示させてくれます。絵の雰囲気が西洋的で、非日常的。出てくる人物も白人っぽい骨格と、アンバランスな体形。病的な世界をうまいこと作っています。 単純ではないお話なので、何がどう恐ろしいか説明しにくい。「わからない状況になって、助からない」、「どんどん変な世界に突き進んでしまう」という恐ろしさがあります。基本的に、自分が理解できないものは怖いと感じる人間の本能のような部分に訴えかけてくる作品で、読み終わった後に、嫌な気持ちが割と長く残り、その日に見る夢に出てきそうな、息の長い恐怖感がゆっくり味わえます。 こういう作品を、自分が子どもの時に読んだことがないので、何とも言えませんが、大人が読んでも十分摩訶不思議な恐ろしさを体験できると思います。 特に、精神的に参ってくるような、恐怖感を体験できる作品と言えます。 自分を見失っていく恐怖、良かれと思ってやったことが最終的にはすべて裏目にでていく恐ろしさ、理不尽で理解不能な展開…。 この絵本を読むと、自分が今ここに本当に存在しているのか疑問になって、つい、自分の顔を叩いて確認したくなります。ご期待ください。
投稿日:2018/06/27
怪談えほん2。 一見ファンタジーのようですが、実に生々しいストーリーです。 少女マイマイは、両親には見えない小さな弟ナイナイと出会います。 クルミの殻にナイナイを入れて出かけたマイマイは、 馬との接触事故で右目を壊してしまいます。 そこで、その右目にナイナイのいるクルミの殻をはめるのです! 夜の夢? マイマイの心? ずっとマイマイに寄り添うカタツムリは、マイマイの化身でしょうか? とすると、殻が呼応します。 殻に閉じ込められた心。 宇野亜喜良さん独特の少女像が、ヒタヒタと迫ってきます。 散りばめられたアイテムが気になります。
投稿日:2016/02/01
さすがに怪談好きな娘も、この絵本は難しかったようです。 「わけわからん。」 私も何度も読み返しました。 この「怪談えほん」シリーズは、それぞれが、それぞれの独特の世界観があり、 「怖さ」もいろいろある気がします。 マイマイは、小さい小さい弟、ナイナイを見つけます。 でも、おかあさんにも、おとうさんにも見えない。 マイマイは、ナイナイをくるみの殻に入れ、 壊れた目の変わりに、くるみをはめます。 ナイナイは、そっと殻をあけ、夜の夢を引きずり込むと・・・ マイマイの心が、くるみの外に出られない。 どうしよう。 どうしたらいいの? ナイナイをくるみの殻に閉じ込めたのがいけなかったの? 考えれば考えるほど、自分の無力さを感じてしまう・・・ マイマイは、どうなっちゃうの?
投稿日:2013/03/04
「怪談えほん」シリーズの1冊です。 もう、なんというか「ゾクリ」とくる怖さがあります。 今回のこのシリーズはどうやら大人向けの本格小説を書かれている作家さんたちに会えて、「絵本」というジャンルで「怪談」を語ってもらっているようです。 なので、内容的にはわざと子どもたちに媚びたような感じはありません。 独特の世界観をそのまま絵本として表現してくださっている気がします。 今回の「マイマイとナイナイ」も怖かったです。 心の臓にグサッ!ゾクッ!ときました。 宇野亜喜良さんの固めになった「マイマイ」怖すぎです! 怖いのが大好きな小学校高学年以上のお子さんたちにお薦めします。
投稿日:2012/08/02
「怪談えほん」という謳いに釣られて手に取ってしまいました。 美しい少女マイマイに襲い掛かる悲劇。 あまりに小さくて両親には見えない弟のナイナイ。 愛しんでいたその弟の蛮行で苦しむマイマイ。 「ねぇ、きみ、たすけてやって。」 救い無くこの言葉で終わるこのお話は、けっして読み心地はよくありません。 色々な問題を提議しているのでしょう。 マイマイに何をしてあげられるだろう… しばし本気で考えてしまいました。 宇野さんの絵だから読んでみたくなった作品でした。 宇野さんでなければ、描けない世界だとおもいます。 ひとかけらの笑顔もなく、無邪気に楽しむナイナイの表情に 薄ら寒い物を感じました。 でも好奇心旺盛で無心な子供の本当の姿かもしれませんね。
投稿日:2012/07/09
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