この絵本の文を書いたのは、あの山崎ナオコーラさん。
名前だけでわかってしまうだろうが、『人のセックスを笑うな』や『美しい距離』といった作品を書き、ひと頃最も芥川賞に近かったのではないでしょうか、そのナオコーラさんが初めて手掛けた絵本です。
これがとってもいい。
絵を担当したささめやゆきさんの絵もいいけれど、おそらくナオコーラさんの文章の一つひとつが、おとうさんと子どもの愛を描いて秀逸だ。
お父さんが登場する絵本はそれこそ山のようにあるだろうが、この作品はその山の頂上あたりに置いても見劣りしない。
「絵本を作ることは、長年の夢だった。」と、ナオコーラさんはいう。
本が好きだった彼女は大人になって、絵本ではなく小説を書いた。大きな賞の候補者になったり、落ちたり、そんなことを繰り返して彼女は書くということに悩んでいたような気がする。
そこに、実際子どもを授かり、その子どもが絵本に触れる姿を見て、もう一度本のことが見えるようになったのではないか。
「何かを教えるためには、本は存在しない」と。
「読書は自由を求める行為」ということを、自身が子どもを育てるなかで、再発見した。
そこに誕生したのが、この絵本だ。
だから、この絵本はとっても「自由」だ。
お父さんの顔から子どもの手でメガネがはずされる。
メガネでしか見えないものがメガネをとることで、もっと違う光景を見せてくれる。
例えば、とっても大切な人の顔。
こんな素敵な絵本を作った山崎ナオコーラさんの新作が楽しみだ。