このお話、何度も読み返しました。
動物は必要以上に殺したりしません。
今日生きるため、その為だけです。
そして小十朗も、欲のためではなく生きるために…
お互いにそれをわかっていたから、熊たちは小十朗が好きだったし、きっと小十朗も熊たちが好きだった。
でも、熊たちだって鉄砲で撃たれたりするのは好きではなかった。
小十朗も猟師なんかしたくなかった。
ずっと苦しくて切なくて悲しかったのだろう…
小十朗は猟師で、熊は熊。
それは因果だと、きっと自分に言い聞かせていたんですね。
そして一月のある日の朝、小十朗はもう遠くへいってしまうようでした
そして小十朗の母も、それを悟ったようでした
「おお小十朗おまえを殺すつもりはなかった。」という熊に、小十朗はすんなり死を受け入れます。
「熊ども、ゆるせよ。」
小十朗の最後の言葉は、今まで悪かったという事なのか、死んで悪かったという事なのか…
小十朗の死顔が笑っているようだったのは、こうなったのも因果だという、熊たちへ向けたメッセージだと思います。
そして小十朗自身、どこか安心したのだと思います。
最後、熊たちは小十朗の周りに集まって少しも離れようとしませんでした。
…何か声をかけていたのでしょうか
今まで小十朗が仕留めた熊にしていたように。
本当は憎むべき存在なのに許し、心を通わせ合った、小十朗と熊。
とてつもない…深い絆を感じました。
あべさんの絵は堂々としていて、静かで凛とした、命の重さを感じます。
熊が撃たれて倒れている場面は胸が締め付けられますが、一番好きです。