「かはたれ」シリーズを読んで、朽木さんの文章と、物語の繊細さにファンになり、この夏、下の子の読書感想文にいいんじゃないかと、薦めてみました。
出版社からのおすすめの年齢が、小学校中学年以上ということで、
文字は比較的大きめで、行間も大きめに空いているので、大変読みやすい作りになっています。
本の紹介を読めばわかることですが、作者は広島原爆の被爆2世なので、『原爆』への思いはいろいろあると思います。
けれども、このお話の中に「被害者」としての心情は書き込まれていなかったように思いました。
うちの子は、第2次世界大戦中の広島に落ちた原爆のことが書かれているにもかかわらず、おどろおどろしたところがなく「怖くなかったので、読みやすかった」と言っていました。
この物語はあくまでも、代々常に化かされてしまっている主人公の女の子(也子:かのこ)の家族と、その狐たちとの交流(友情)がメインに描かれていて、たまたま也子と子ぎつねの時代が、戦争の真っただ中だったという印象しかありません。
だから、物語の中に浸かっていると”原爆”が怖いとかいう印象はほとんどなく、「爆弾が投下された中、町へ也子へあげるための花を探しに行ったあの子狐はどうなったんだろう」というところで物語は終わっていきます。
これは、その後がめちゃめちゃ気になる終わり方ですが、すべてを語らない物語だからこそ、受け止めた読者ひとり一人がその後を自由に想像できる終わり方で、私は結構こういう終わり方が好きです。
かわいい狐の子が「あんた、あたしに化かされたい?」って、聞くシーンが私はすごく気に入っています。
とても読みやすい文章です。狐が好きな方、子どもたちに戦争系の物語をソフトに伝えてみたい方、ぜひ、親子で読んでみてください。
この作品は学研の「新・創作シリーズ」というところから出ています。