征矢清さんの「いだてんの六」を先に読んだのですが、ごろったきつねにも、似た印象を持ちました。
人並み以上の才能がありながらも、努力や向上心とは無縁というところです。
いたずらやよからぬ図りごとにエネルギーを費やすよりも、もっと地道な生き方があるのになと思うのです。
でも、心のもう一方で、向上心や野心にあふれた人ばかりでは、疲れるという思いもあるのです。
矛盾していますが、自分にはごろったぎつねのような生き方はできないだけに、惹かれるところもあるのです。
盗んだ絵具で絵描きの気分を味わっているきつね。依頼主に合わせたり、合せなかったりして絵を描く様子や、依頼主とのやりとりに笑ってしまいました。
絵本の中の主人公の一つの特徴として、こりない、成長しないというのがあると思うのですが、このきつねもそうであるように思います。
でも、どことなく憎めない感じもあるから不思議です。
絵が、とても合っていていいなと思いました。余白の美と木枠による額縁が効果的だと思います。