初めて海に行って波を大好きになった男の子が、その波を家に連れて帰り一緒に暮らすというお話。イラストがこの壮大な発想に負けることなく大胆で鮮やか、とてもいい味を出しています。
再度この絵本に出会えてうれしい!というのが、邦訳版を見ての感想です。息子が小さかった頃、図書館で出会った『My Life with the Wave』にただただ見とれていました。このユニークな構想……。米国には思いもよらない発想の絵本があるものだと感心したことを覚えています。それが今、邦訳を手にして、この絵本の原案はメキシコの詩人・評論家でノーベル文学賞受賞作家でもあるオクタビオ・パスの短編小説によっていたことを知り、さらに興味が深まりました。幸せそうに自分の部屋の中で波と遊ぶ男の子の表情がすごくいい。最後に凍った波を海に戻すページは、寂しいけれど新しい出発の気配を感じさせてくれます。
息子はいつものようにイラストを満喫した様子です。犬とネコがどのページにいるのか確かめていました。男の子の部屋には野球の選手のポスターが貼ってあり、「誰だろうね、左バッターだよ」などと話したり。絵本『ゴリラのマービンにげちゃった』のマービンのぬいぐるみ人形も飾ってあり、わたしは小さな発見に一人で感動していました!(『ゴリラの……』邦訳版は重版未定なのです。ぜひ再版していただきたい絵本です。米国ではお人形もあるほど人気作品なのですから……。)
季節で言えば夏にお薦めの絵本になるでしょうか。絵だけでも十分楽しめます。小学2・3年生ぐらいから。