「岩波の子どもの本」シリーズ。
60年代にスイスで出版されたものを翻訳した「赤ずきん」。
森や山に囲まれ、本当に狼が出没していた「赤ずきん」の本場(?)の迫力が伝わる。
昔風の絵は、最近の「子どもに好かれたい・売れたい・受けたい」という媚びた雰囲気は一切なく、真面目でやや頑なな印象を受ける。が、森の木や叢、狼などが生命力があり、背景だけでも物語がありそうな力強さがある。
言葉も昔の絵本のやや硬い感じ、教育的な感じが面白い。丁寧なよい言葉だけを厳選し、フォントも教科書に載っているような明朝体風。大人びた印象だ。昔の絵本を見ると、時代の雰囲気や、今の時代の特徴がはっきり見えてくるので面白い。
いつの時代にも、流行があって、将来を担う子どもたちに臨むことがあって、それを大人が造って絵本などの形で発信している。それらが感じられるようで、昔のひとと会話をしているような気がした。
話自体は、今の赤ずきんとあまり変わらないが、最近の話だと、悪役に厳罰で臨まない方に向かっているという。狼だって生活があるのだから、悪者扱いされても困る。
子どもを一人で猛獣がいる森に使いにやらせる母親もどうかしている。復讐の方法が残酷なのもおとぎ話の特徴だが、戦争に明け暮れた時代を経て現在があることを考えると、復讐に力が入るのは人間の習い性になってしまっているのかもしれない。
将来の「赤ずきん」は、厳罰で狼に復習するのではなく、もっと知恵をつかって両者が共存していくような話になっていくのかもしれない。なんて。