※1979年に旺文社より刊行された絵本の復刊。作者が79年の冬にヨーロッパを旅して、本場の街並みとクリスマスのイメージが融合してできあがった本気メルヘン。登場するものは全て、モノでもなんでも心があり、魂がある。特に印象深いのは最初の場面。冬場のヨーロッパでは、家や車、ポストなんかにも容赦なく寒さが襲い掛かり、みんな死にそうになって、必死に耐えている。その描写が、一段と寒い空気を運んでくる。温かい部屋で熱い紅茶を飲みながら絵本を楽しんで、絵本の世界とのギャップを感じて楽しめた。 また、細かいところにも小技が効いていて、「ぜんそくもちの犬」とか、もっさりした雪だるまの様子を表す言葉など、見どころが満載。仕事が終わった後、温泉につかるおっさん軍団とか、仕事の前に精神集中の逆立ちをするとか、やや東洋的な趣味を感じさせるのが、楽しい。おそらくあの村では「禅」がブームで、みんなマインドフルネス瞑想なんかをやっているのかもしれない。70年代〜80年代のオカルトやニューエイジの雰囲気がスパイスになっている、本気メルヘン絵本。大人が読んでも楽しめる事、請け合います。