幼稚園にそびえたつ大きなイチョウの木。お母さんを病気でなくしたしんやは、色々なことをそのイチョウの木に話します。まるで、何でも聞いてくれるお母さんのような存在の木です。
そのイチョウの木が、周りの家に迷惑をかけているという理由で切られることになります。どうにかしてそれを止めようとする子どもたちでしたが・・・
大人の都合で切り倒される大イチョウの木。
大人にとってはどうってことはないと思えることでも、子どもには身を切られるほどつらいことだってあるのです。
どうしようもない思いを誰にもぶつけられず、砂場で頭からめちゃくちゃに砂をかぶるしんや・・・その気持ちが痛いほど伝わってきます。
切り株から水が染み出しているのも、大人が見れば単に「勢いのある木だから」なのですが、子どもたちにはそれが泣いているように見えます。
大きな心の拠り所を失ったしんやでしたが、おばあちゃんから命は親から子へ鎖のようにつながっていくことを教えてもらい、ぎんなんからイチョウの木を育てる決意をします。大きくなったらお母さんの故郷の山へ植え替えるつもりだと言います。
命あるものはいつかは消えてしまうけど、またそこから新しい命が生まれる・・・大イチョウを通して、しんやがお母さんの分までたくましく生きようと思ったのではないかと思いました。
お話の途中、イチョウの木に灯がともされる場面は、懐かしいモチモチの木の話を思い出し、その幻想的な美しさに見とれてしまいました。
切ない気持ちと同時に、読んだ後に温かい気持ちにさせられる1冊です。