表紙絵の狐が振袖を着ている姿に少々違和感を覚えながらも開きました。
読んで正解!
通り過ぎずに良かった〜。
まさにこれからの季節にピッタリです。
長い年月、仕立て一筋に生きてきたおばあさん。
その仕立ての針を進める様子が素敵です。
ある夜更け、訪ねてきた狐の母娘に、明日の日の入りまでに振袖を仕立てて欲しいと頼まれて、・・・。
無理な刻限を承知ながらも、狐母子の想いをくんで引き受けたおばあさん。
母狐が、苦労し持ってきた布地と共に添えられた娘の持ってきた目も覚めるような色とりどりの紅葉の葉っぱ。
おばあさんの幼い頃から見続け愛してきた山の紅葉の色と重なり、おばあさんの流した涙が、葉っぱを小布に変え、・・・。
着物の仕立て・秋の紅葉・母娘の情愛・おばあさんの真心のこもった仕事ぶりが、ファンタジーの形で見事に完成されています。
改めて表紙絵を見ると、感慨深いものがありました。
カバー折り返しの一文が素敵なので、添えます。
“山に紅葉の散る 夕暮れ時 振袖の形にとどまりて 見ゆることあり 人々これを 狐の振袖という”
長めの文章ですので、高学年からの一人読みにお薦めです。