これを手に取れる今年の高校生は幸運だ。
著者は、主人公ルイス・ミショーの姪にあたる図書館司書。多くの人にインタビューをし、ていねいにルイス・ミショーの生涯をたどっている。足りない部分は無理のないフィクションで埋めているらしく、読み物として読みやすい。
彼は、「二グロは本を読まない」と言われていた時代に、ニューヨークのハーレムに本屋を開き、その店はのちに、黒人に関するあらゆる本を揃える全米一の本屋になるのだ。
店には、マルコムXや多くの著名人が集い、議論を闘わす場所になる。
彼は書店の奥に買わなくても本を読めるスペースを設け、ハーレムの少年たちに知識を提供する。
原書のタイトル「no cristal stair」は、彼が学校へ行っていない少年に薦めた詩集にのっていたラングストンの詩の一節だ。
黒人の尊厳の高めるため、黒人の意識を高めるため、この書店が荷った役割は小さくない。誇り高き本屋である。
夏休み初めにこれが品切れとは、あすなろ書房は何をしているのか。早急に増刷して、この素晴らしい本を多くの人に届けてほしい。