この本が新館コーナーに置かれた時から気になっていました。
白を基調とした表紙に描かれているのは白い小さな蔵の絵。
裏表紙にはそれほど幅のない川にひとりの人影。
それよりも何よりも、この“しゅるしゅるぱん”って、何?いったいどんな“パン”なの?と……。
これは四世代にわたる物語で、“しゅるしゅるぱん”と一つの家族の話でした。
物語の舞台は岩手県朱瑠町。
念のため検索してみましたが、「朱瑠町」という町は存在していません。私は遠野をイメージしながら読みました。
物語の導入、各章に登場する前原家の人たちと、“しゅるしゅるぱん”との関わり。
徐々に見えてくる背景。
ワクワクして一気に読んでしまいました。
ファンタジーでありながら、解人のひいおばあちゃんである「妙」は認知症を患っていて、ほぼ寝たきりの生活をしています。
それで、解人のおばあちゃんの道子さんがその介護の大変さをサラッと語っているシーンがあったり……。
そういうところが自然に物語に溶け込んでいてよかったです。
各章はそれぞれ主人公も時代も違いますが、違和感なく読み進むことが出来ました。
最後の章を読み終えたとき、“しゅるしゅるぱん”がずっとほしかったものを見ることが出来てホッとしました。
「おひこさん、気づいてくれてありがとう!!」って、思っちゃいました〜。
物語の出来は最高にいいと思います。
今後の作者の活躍に期待します。
出来たら、この朱瑠町でのお話をもう少し別の形でも見せてほしいなぁと、思いました。
小学校高学年くらいから中・高生の皆さんにお勧めします。
特に不思議な鋳物(妖怪と妖精とか)好きな人にはお勧めです。