少年が祖父と一緒に東京のあちこちを歩き回る話。
春夏秋冬、それぞれいろんな地域で、素敵な行事や、昔の生活を偲ぶ。
1946年、東京に生まれた筆者。巻末に東京に対する思い入れがつづられている。町がどんどん変わっていくことを体験し、昔見聞きしたことがどんどん消えてなくなったり、変わっていったりするのを、どんな思いで見ているのかが、作品のあちこちからわかる気がした。
本書では明治時代ごろ?か、ちょんまげを結った人が登場したり、歴史的な出来事に遭遇したりする。
退屈していた現代人の孫が、祖父と一緒に散歩に出かけた時、身近な場所からいきなり時代があいまいになって、昔の風景に迷い込む。少年は意外と面白がって、あちこちを見て楽しむ。
老人には見えていた風景が、いつの間にか少年にも見えるようになって、よそよそしかった二人は急速に心の距離を縮めていく。同じ風景を見ることで、共通の思い出ができてくる。そのことが少しずつ重なり、二人の関係が良くなっていく。このように「同じ風景」を見たり、同じ空間で同じ体験をすることが、きっと人間の成長やよい関係づくりに必要なのだろう。
最後の方に、老人が自分の親に再開する場面がある。
孫ができて、年老いた自分よりも、ぐっと若い両親に出合った時、実年齢を忘れて「子ども」に戻ってしまった。
泣ける場面である。会いたい人に会えた喜びと、現実に戻った寂しさと、いろんな感情が沸いてくる。長生きするのは決して楽しい事ばかりではなかっただろう老人の来し方を想像して泣けた。
自分にご縁がある場所は、どんな歴史があるのだろうか?
この絵本を読み終わった後、そんな風にご縁があって住んでいる地域について興味を持つようになった。
大事な思い出や、いろんな人の人生を、この地域はずっと見守ってきていて、これからも見守っていくのだろうな。