「わたしは クリスマスツリーに なるの。」
というセリフが何度も出てきます。
山のふもとの雑木林の中に立っている、1本のもみの木の言葉です。
きれいな街でクリスマスツリーになるのが、もみの木の夢。
けれど、今年ももみの木を乗せた列車に乗れなかったことを知ると、
もみの木は意外な行動に出ます。
まさか、もみの木が走り出すなんて!!
走り出したもみの木の異様な姿に、思わず笑ってしまいましたが、
駅を目指してひたすらに走る姿、今年も夢が叶わないことを
確信してしまうシーンなど、ちょっとした文章からもみの木の
「クリスマスツリーになりたい」という気持ちがひしひしと
伝わってきて、なんともやるせない気持ちになりました。
そしてなにより、傷心状態で雑木林に戻ってきたもみの木に
接する、仲間達の様子がとても良いんです。
この作品は、クリスマスの絵本だと思ってはいけません。
とてもとても仲間思いの、友情溢れるお話です。
サンタさんは出てきませんが、仲間達がサンタさんになって、
もみの木に夢のプレゼントを運んでくれたのかなと思います。
想像力溢れる、素敵な1冊だと思います。