シェル・シルヴァスタインの作品で村上春樹さんが翻訳といえば『おおきな木』が有名です。
またシェル・シルヴァスタインの作品で有名といえば、倉橋由美子さんが翻訳して日本でもベストセラーになった『ぼくを探しに』が知られていて、倉橋さんはその続編の『ビッグ・オーとの出会い』も翻訳しています。
今回村上春樹さんが翻訳したのは続編の方で、原題は「The missing piece meets the Big O」です。
原題からすれば、村上春樹さんの方が直訳に近い。
ただ「「The missing piece」の訳について説明が必要かもしれません。
この絵本の最後に村上春樹さんによる「訳者あとがき」(これがとってもわかりやすく、この絵本を読むにあたってはまずここから読むのもアリかな)にこうあります。
「missing pieceというのは「あるべきなのに欠けている部分」ということ」で、この絵本では「くさびのような形」をしていて、倉橋由美子さんは「かけら」、村上春樹さんは「はぐれくん」と訳していて、村上春樹さんは「はぐれくんの方がなんとなくこのお話には合っている気がした」と記しています。
おそらく村上春樹さんは「missing」に重点を置いたのでしょう。
物語は、「はぐれくん」が自分と一緒になるべき相手を探す姿を描いています。
最後に出会うのが「Big O」で、村上春樹さんはシェル・シルヴァスタインの絵のままに「おおきなマル」と訳しています。
「おおきなマル」に自分が変わることも必要と教えられる「はぐれくん」。
やがて、彼は「missing」でなくなっていきます。
線だけの単調な絵ですが、その中身はかなり深い。
そんな絵本です。