1967年刊行。当時のダムと、建築現場で働く人たちを描いた絵本。
山奥にダムを建設する。調査、土木作業、休み時間の過ごし方、昼も夜も働く様子などが見られる。
昭和の後期に、マンガやテレビアニメなどでダムに沈む村、という悲しい話に触れたのが強烈に心に残り、ずいぶん長いこと「ダム=悪者、環境破壊」という思い込みがあった。
中年になってから、水の利用の歴史を知る機会があり、川やダムなどを開発することで、水資源や発電、防災、地域の商業などによい効果を与えてきたこともわかった。
無事に過ごせることや、便利に生活できることがあたりまえ、という今の暮らしは、先人たちの努力の上に成り立っている。
もののありがたみがわかるようになってきたのは、年をとってから、良かったと思うこと。
普段の暮らしが平和で便利であることのありがたみがわかるようになってきたことも同様。
この本は60年代の後半に出版されたもので、昭和のダム建築の様子が描かれているものだと思う。
本書の中に詳しい説明などはなく、ただ、時系列にダムを造る様子が描かれている。
自分では直接見たことがない風景だが、実に生き生きと描かれ、仕事に誇りをもって働いている様子や、家族を思う気持ち、つらい状況でもやり抜く決意などを感じ取ることができる。
1人1人の性格や暮らしぶり、辿ってきた人生なども垣間見られるようで興味深い。一人一人の個性を尊重し、描き分けている作者の真心に感動する。
建設の道具や機械が図鑑みたいになっていて名前がわかったり、建築の場面がいろいろな構図で見られて興味深い。
作者は、たくさんの伝えたいことを、できるだけシンプルな形で表現したのだと思った。
この絵本で一番ほっとしたのは、出てくる動物が1匹も傷つかないところだ。私たちの暮らしに必要なものを、自然に無理を言って作らせてもらって、使わせていただいているのだから、電気や水などは大事に使わなければならないと思った。
あと、こういうものを作ってくれたおじさん、おばさんたちにも、感謝しなければならない。ありがとうございました。