「ふしぎな絵本」と副題にありますが、ショートストーリーの童話が十二篇、
それに、やなせさんの絵が多目に寄り添っているという感じです。
私にとっては、やなせたかしさんはこの作品のような短い童話作家のイメージの方が強く、
アンパンマン以前の、少女時代にタイムスリップしたような読後感でした。
初期の作品ということもあってか、まさに、やなせさんが前書きで記しているとおり、
「その後の作品の基本形は全てこの十二篇の中に含まれている」と思います。
もうすでに、アンパンマン(今のアンパンマンとは少し風貌は違いますが)も登場しているんですよ!
「詩とメルヘン」で称されるやなせさんらしく、メルヘンチックな設定で物語が進みますが、
そこに流れるヒューマニティは切なく、重いです。
従軍経験のあるやなせさんだからこそ、戦争、平和、争い、復讐、命、愛情、真心などが
リアリティをもって伝わってきます。
やや古風なので、大人向けかもしれません。
そっと読んでほしいと思います。