その辺にあるが、普段は風景の一部として見過ごしがちな「こけ」。道端のこけを観察し、その種類や成長の過程、胞子を飛ばして増えていく様子などを追いかけた写真絵本。
子どもの時に聞いた悪口で「ばか、こけ、まぬけ」というのがあった。ばかとまぬけはわかるが、「こけ」というのが良くわからなかった。「人をこけにする」などとも使う言葉だが、その語源はどうあれ、「こけ」というのは、素晴らしい。この絵本を読んで、こけの印象ががらりと変わった。
非常に小さい体で、人間はおおよそ無視している存在なのに、生存・繁栄のための工夫が満載。たくさんの胞子を放ち、卵と合体してこけの小さい株になる。不思議な増え方をするな、おもしろいな、と思ってなんども見返してしまう。水の中で生きるこけや、他の植物が生育できない厳しい環境で敢えて生きるこけなどもあり、植物界の隙間産業の成功例と思えて、頼もしい。
今後は誰かに「こけ」にされたら、大喜びできそうだ。
そして案外、こけは美しいものが多い。