手に取り表紙絵を目にし、独特な木炭画に強烈な印象を持ちました。
凍てつく外の空気の指すような冷たさ、サクサクと雪を踏みしめる靴音・キッコちゃんや木の陰に隠れる動物たちの吐く息の白さが本当に感じられる絵です。
さて、お話はキッコちゃんが忘れ物(ケーキ)をしたお父さんを追いかけ森を通り、おばあちゃんの家まで行くお話です。
おばあちゃんの家までは森を抜けなくちゃならないというので、大丈夫かな?と思いましたが、キッコちゃんが家を出てすぐにお父さんの足跡を見つけたので、「あ〜、なんとかなりそうね」とキッコちゃんと一緒にちょっと安心して読み進めました。
ところが、足元の悪い雪道でキッコちゃんが転び、ケーキの箱が潰れたあたりで、どんなに心細い事だろうと私もドキドキして来ました。
そして、不思議なお茶会を催している家へ入って行ったページに息を呑みました。
次のページの「さむかったでしょう、さあさあ、こちらへ」の鹿婦人の台詞で、この部屋の室温の暖かさを感じ始め、えもいわれぬ穏やかで優しい雰囲気にほっとしました。
このウエルカムウエルカムの和やかで素敵なお茶の時間に、キッコちゃんは人心地がつけたのでしょうね。
この後の、お茶会のメンバーの差し出すたくさんの優しさや励ましにグッと来ます。
キッコちゃんの可愛らしさや動物たちの優しさの象徴と言えるケーキへの注し色が、お洒落な演出でした。
森の行進は、いつまでも忘れられないシーンになりそうです。
おばあちゃんの家で開いたケーキ箱から、このお話はファンタジーなんかじゃない、キッコちゃんの“素敵な新しい出会い”だったんだと、お子さんたちを納得させるエンディングもお洒落でした。
また、森の奥のお茶会へ行ってみたいですね、キッコちゃん。
空気の冷たさ暖かさを感じられる素敵な作品でした。