夜の待合室。壊れた5人のおもちゃたちが直してもらうのを待っています。ドアがあいて、出て来るおもちゃ。入って行くおもちゃ。お医者さんの部屋に入るときの音と出てくるときの音、この「音」の違いが、元気になったおもちゃの気持ちと体の状態を巧みに表現しています。とにかく擬態語の「音」が絶妙。(訳は斉藤洋さん)もともとはドイツ語の絵本と察しますが、原語ではどんな音だったのでしょう。日本語の場合、これは訳者のみずみずしい創造力とも思えますが、「音」と空間・時間の「間」が上手に組み合わされ、設定はシンプルなのに、そこにドラマが展開されています。
語りは一番最後のおもちゃの男の子が担当しているのですが、この子の気持ちがまたかわいい。待合室での緊張感が素直に語られ、子供の気持ちの代弁とも思えます。一人一人減っていくところは数の認識も刺激します。(娘は数えていました。)「音」のところは、感じを出して表現すると楽しいです。(息子は、こういう音、大好きなのです。)
もともとは映画用に作られたというお話・イラストだそうですが、それがこの「間合い」を作り出している理由かもしれません。新しいものでいいなと思える作品って、なかなかお目にかかれませんが、この絵本は出会えてよかったと心から思いました。新しい感覚なのに、シンプルで胸を打つものがあり、絵本の真髄をすべて満たした希代の絵本だと思います。おもちゃの存在が身近になって、お医者さんなどの待合室も体験済みの年齢、2・3歳ぐらいのお子さんからどうぞ。この中のおもちゃひとつと、この絵本をセットにしてプレゼントにもいいな〜と思ってしまいました。きっと、みんなおもちゃを大切にすることでしょう。