よわむしのラチが「いかによわむしか」を描写したところも、みじめだったり悲劇的だったりというのではなく、子供ならみんなどこか共感できるものばかり。全部共感できる子は少ないかもしれませんが、1つは絶対、心当たりあるはずです。
らいおんと出会ってからのラチは、どこか、おなじみのアニメ「ドラえもん」ののび太くんっぽいのですが、強くなろうとすこしずつ努力をする姿はかわいらしくもいじらしい、でも一緒に頑張ってくれるらいおんがいるから大丈夫だね!と声をかけたくなります。
のっぽのいじめっこをやりこめるシーンでは、のっぽくんの落し物のぼうしやマフラーを手がかりにラチがおいかけていくのですが、そこでの擬人法が光ります。ただ「ぼうしがおちています、きっとこっちににげたんでしょう」という描かれ方をするよりも、「ぼうしがおしえます『こっちだよ』」という繰り返しは、新鮮に子供の耳に響くと思います。いじめっこの持ち物がラチの味方のような発言(?)をするのもおもしろいですね。
最後の手紙は、やさしさと厳しさとりりしさを感じさせる文体で、じーんときます。でも、「おしまい」という最後のページではおまけのように、らいおんが頭をひねりながらその感動の手紙を書いているらしき姿が描かれていて、それがなんともユニークで、楽しい気持ちで本をとじることができます。