原作が出されたのは2001年ですが、口蹄疫に見舞われた農場の話はあまりにも今日の日本が脅かされている問題と近すぎて、その恐ろしさと口蹄疫に家畜を失わなければならない農場の苦しみが痛いほど実感される物語です。
口蹄疫、鳥インフルエンザ。
その感染は防ぎようのない、見えない悪魔のようです。
農場の娘ベッキーは、生まれた子ヒツジにリトル・ジョッシュと名前をつけ、とても可愛がっていました。
イギリスの遠い地に口蹄疫が出て、不安におののく両親。
危惧していた感染が現実のものとなったとき、家庭はパニックに襲われます。
自分が口蹄疫を持ちこんだと罪悪感に打ちのめされるベッキー。
気丈に家畜たちを頬むった後、父親は心を壊してしまいます。
口蹄疫、うつ病、フィクションではあるけれど、他人事に思えない問題を鋭く描いています。
モーパーゴが実体験した口蹄疫を題材にしているからでしょうか。
フィクションでありながらとても生々しいので、とても怖い話でもあります。
目に見えない悪魔に脅かされている現代社会。
多分、口蹄疫被害にあった農家にあっては祈るしかないのでしょうが、ただ消費者としての問題意識ではなく社会問題として意識しなければいけないと思いますし、子どもたちとともに意識するためには解説書より、このようなフィクションがとても重要だと思います。
モーパーゴは、この悲惨な話をこれからへの希望で締めくくっています。
灯りの見えない物語では、子どもたちにとってつらいだけです。