クリムトは1900年代初頭に活躍したオーストリアの画家です。名前は知らなくても、作品を観れば、「ああ見たことがある」と思われる方はたくさんいらっしゃるでしょう。その作品は「妖艶で甘美なエロス」と評される物が多く、その官能的すぎる作品ゆえに、発表と同時に撤去せざるを得なくなったこともありました。
この本はクリムトの飼い猫が話者となり、人間クリムトの日常や心情を描いています。
「私にとって大事なのは、どれだけ多くの人が、私の絵を気にいってくれたかではなく、だれが気にいってくれたかなのだ。」
そういって、時代を突き進んだ、クリムト。
見るものを圧倒する美しさゆえに、私はクリムトの人間像を一度たりとも考えたことがありませんでした。逆に彼の描く風景画はどこまでもやさしく、作品のあまりのギャップに理解に苦しんだこともありました。
今回この本に巡り合って初めて、そのひととなりに触れることができ、やっと宿題の答えがみつかったような気分です。