ひめねずみと暮らしていた風の子フーが、女の子と出会い、やがて二人は旅立ちます。ひめねずみと、ガラスのストーブを残して・・・
残されたひめねずみを思うと切なくて、それでも沢山のねずみ仲間と出会えたことはせめてもの救いのように思いました。
何年も過ぎ、風の精となったフーが戻って来た時には、そこにひめねずみの姿はありませんでした。
そして、背丈が二十センチほど伸びただけのはずなのに、ガラスのストーブはあまりにも小さく、遠い存在になっていた・・・
大人になる、ということ。子どもの頃に過ごしたあの世界にはもう決して戻ることはできない・・・そう悟った時、フーは本物の風となったのです。
読み聞かせが終わった時、息子は涙ぐんでいました。
ひめねずみが死んでしまったところが可哀相だと思ったらしいです。何年か後に息子が成長し、この絵本を読み返した時、またどんな感想を聞くことができるでしょうか。
この切ない安房直子さんの名作に、降矢さんの挿絵が見事に合っていて、その世界観を更に素晴らしいものにしてくれています。
先日聞いたトークライブでは、この絵本の挿絵には下地にピンク色を使われたとのことで、そのせいか寒々とした冬の景色の中にもほのかな暖かさを感じることが出来ます。
1ページ1ページがため息が出るほど美しい。そして、ひめねずみが何とも言えず可愛らしく、絵だけ見ていても楽しめます。
冬に是非読みたい、まさに宝箱のような珠玉の作品です。