気になりつつも読む機会がなく、やっと読むことのできた一冊です。
レビューを書くにあたり、先に皆さんのレビューを読ませていただいた
のですが、評価が真っ二つに分かれていて、大変驚きました。
ポイントはやはり、「銀のうろこ」の存在なんですね。
「銀のうろこ」を持っていたから、傲慢な横柄な態度が身についてしまった
にじいろのさかな。
無邪気に「銀のうろこ」を欲しがった小さな魚(おそらく稚魚)に対しても
傲慢で横柄な態度で接したという噂は、にじいろのさかなの印象を今までで
一番最悪なものにしてしまったのでしょう。
このことでみんなに無視されることになったにじいろのさかなは、たこに
アドバイスを受け、宝物である「銀のうろこ」をみんなに分け与えることで、
みんなとの距離を縮めることができるんです。
その様子はまるで「銀のうろこ」で友達を買収しているようにも見え、
レビューでの批判が絶えないのだと理解できました。
そもそも、にじろのさかなが無視されるようになったのは、今回の出来事
だけが問題なのではなく、それまでの傲慢な態度の積み重ねが原因なのだ、
と思うんですよね。
「銀のうろこ」を保有していたことで、周りの魚を見下していた魚。
周りの魚は自分のうろこを褒めるためにいるのだと思っていた魚。
「あそぼう!」と話しかけられても、無視して通り過ぎていた魚。
そう、最初にみんなを無視したのは、にじいろのさかなの方ではないですか!
他と違うところは、自分にとって最大の魅力ある長所であると同時に、
最大の短所でもあると思うんです。
にじいろのさかなにとって「銀のうろこ」は、まさに”それ”であり、
「銀のうろこ」に頼りすぎてしまった結果、魅力が短所へと変わって
しまったのかなと思います。
そう考えると、たこのくれたアドバイスには、とても合点がいくんです。
「銀のうろこ」が剥がされていくたびに、にじいろのさかなの凝り固まったプライドが
徐々に剥がされ、そしてみんなと気持ちを共有する喜びを知るのです。
注目すべき点は、「銀のうろこ」を失った後の魚の気持ちの変化でしょう。
「あそぼう!」とみんなに呼ばれ、「いま いくよ」と返事をしていた
にじいろのさかなの姿に、良かったねと思わずにはいられませんでした。
おそらく、初めて本当の友達ができた瞬間だったのでは?と思います。
評価がはっきりと分かれるこの作品、私はといいますと、好きな作品に
一票投じたいと思います。そして、なんといっても挿絵の美しさは、
天下一品だと思います。
もしかしたらこの作品は、読んだ時の自分の心境や年代によって、いろんな
捉え方の出来る作品なのかもしれませんね。いろんな人にこの作品を
読んでいただき、どんな感想を持ったか是非聞いてみたいです。