絵も文も美しい、丁寧に作られた宝石のような絵本。
真っ暗な部屋、とうに枯れてしまった花瓶の花。
猫背のしょんぼりしたおじいさん。
そんな悲しい絵に、少しずつ光が射し、おじいさんの表情は生き生きし始め、おしゃれになってゆく。
そして花瓶には真っ赤な花が。
たとえ自分の取り分がほんの少しになっても、動物たちや子供たちに、わけへだてなく惜しむことなくスープを与え続けるおじいさん。
みんながおいしそうにスープを飲む場面の、なんと幸せそうなこと。
「受くるより与うるは幸いかな」
という言葉を思い出します。
息子は無邪気に
「おじいさん、さみしかったけど、おともだちいっぱいできてよかったね」
どんなに寂しくても、人は他人とつながっていなければならないのだ。
それは、自分の心がけ次第なのだ。と、思いました。
息子が
「あ、赤ちゃんがお人形忘れている」
と指差した最後のページには、べとべとに汚れたおじいさんのナプキンと小さなぬいぐるみ。それを微笑みながら見ているおじいさん。
一つ前のページには、おじいさんのナプキンを借りてエプロンにして、顔をお皿に突っ込むようにして、夢中でスープを飲んでいる小さな子供の絵が。
きっと、この子は明日もおじいさんのところにやってくるでしょう。
明日がある。なんて素晴らしいことでしょう。