誰にでもある大切なもの。その大切なものをなくしてしまったら・・・?子どもにとっては、特に、何でもないようなものや、使い古して汚れたもの、壊れかかっているものでも、ほかの何物にも代えられない、かけがえのない宝物であることが多いですよね。「わたし」にとっては、帽子がそんな存在だったんでしょうね。子どもなりに、いっぱい思い出もあったでしょう。いろんな思い入れもあったでしょう。その気持ちがわかるだけに、親の私たちもなんだか切なくなってしまいますね。
娘も、3歳になる夏までは、公園に行くときは必ず、ピンクの帽子をかぶっていました。出産祝いにいただいて、3ヶ月の頃からかぶっていた帽子。夏の暑い日も、小雨の降る寒い朝も、毎日その帽子をかぶって、公園に通っていました。ピンクの帽子がよちよち歩いているようで、とてもかわいらしかった後姿を、遠い昔のことのようになつかしく思い出しました。
この絵本は、純粋な子どもの心の動きをよく表わしていて、親としても、それを大事に、温かく見守ってあげたいな、という気持ちになります。子どものリズムに合わせるのは、とても忍耐が要って、時に難しいことに思われますが、この絵本を読んでいると、そのゆったりとしたリズムが、なんとも心地よく感じられて、自分自身の心も子供のころに帰っていくようです。