少し前に読んだ「ママ、お話読んで」と似た雰囲気のある作品です。
お話は、アメリカの教育家、指導者ブッカー・トラバ・ワシントンの少年時代を描いたものです。
ワシントンが、パパと兄と、岩塩の精製所で働いている風景から始まります。
主人公であるぼくは、文字を教わりたいし、字が読めるようになりたいと切に願っていますが、環境が許しません。
日の出前から日が暮れるまで、働かないとならないのです。
何の不自由なく暮らしている日本の子供からすると、この現実はおよそ理解できないものかも知れません。
でも、年頃が同じ位だとすると、ぼくの学びたいという純粋な気持ちに心打たれないはずがありません。
「ママ、ぼくは字をならいたい」といったことに対して、ママは、小さな本を渡します。
その本は、18世紀〜19世紀のアメリカでもっとも読まれたノア・ウェブスターの綴り方教本。
何も言わないママの心情は、察して余りあるものがあります。
ママは文字が読めないのです。
その働く集団の中に、新聞を読んでくれる同じ黒人がいて、その人に、その本を読んで貰うのですが、ぼくは、思わず踊りだしてしまうのです。
そして、自分の名前を地面に書いて貰った時の最後の言葉が感動的です。
「ぼくは、書かれたその文字を見つめた。
ぼくは、このときのことをけっしてわすれない」
映画のワンシーンを見ているような絵は、生き生きとしていて生の躍動感に溢れたものです。
この絵本の人の表情たるや、まるでそこに人がいるかのような錯覚に陥るくらいの高い水準のもの。
惹きこまれないはずがありません。
推薦図書として多くの人に読んで欲しい作品です。
絶対にオススメの一冊です。