酒井駒子さんの描く表紙のやわらかい毛並みがかわいらしいうさぎの姿からして、愛らしくてとても心惹かれるものがあります。
中身は、もっともっとすばらしい。
実際には、もっと長いお話ですが、こちらのバージョンの方が、無駄を取り除いて、ぎゅっといいところを詰め込んだ感じで、ストレートに胸に染み込んできます。
また、絵とお話があまりのもぴったりときていて、非の打ちどころがないです。
「本当のもの」という言葉がキーワードとして終始出てきます。
クリスマスプレゼントとしてぼうやの元に縁あってやってきた時の、うさぎの不安感。
おもちゃのうさぎが、やがて本当にかわいがられ、愛されて、「本当のもの」だと自覚した時の幸福感の絶頂。
やがて訪れる悲しい別れの場面での打ちひしがれたうさぎの心持ち。
それぞれ痛いくらいに、読んでいて伝わってきます。
それだけに最後に、うさぎが本当の意味で「本当のもの」になった時の感動が、真に胸に響きます。
子供から大人まで、本を開く度に、温かい感動に包まれる絵本です。
何度も、何度でも読みたくなります。