パリの朝。季節は晩秋から初冬でしょうか。
バラバラなったお気に入りの植物図鑑を抱えた女の子が街を歩いています。
もう一方のページには、コートを着た初老にさしかかった男が、背を
まるめつつ、こちらも街を歩いています。
次ページも、女の子は図鑑を直す方法をさがし歩きまわっています。
一方、男は郵便局に寄り、カフェで立ち話をし花屋の前を通り、自分の仕事場へ、長いバゲットを一本手に帰ってきます。
女の子が、男の仕事場の看板“RELIEUR(製本・装幀)”を見つけ、……。
ここまでで、8見開き使われていて、『なんて、素敵な絵本なんだろう』と、もう感心してしまいました。
おじさんの仕事場や作業の描写の詳細さ。
作業をするおじさんの手。
解説付きの作業工程の描写。
そして木に夢中な女の子(ソフィー)との噛みあわないようで、会話になっていく展開。
完成し生まれ変わった図鑑。
その名も『ソフィーの木たち』に、息子は、「うわぁ〜」とだけしか言えませんでした。
エンディングに清々しさを感じました。
印刷技術の発明と共に歩んできた、実用的な職業が、ルリユールだそうです。
制約のあったフランスで成長した技術ですが、いまやこの60工程全てを手仕事でできる製本職人は、フランスでも一桁になったという「後書き」を読んで、購入を決めました。
パリにアパートを借り、何度も路地裏の工房に通いスケッチした、いせ先生の『この素晴らしい技術を伝えなくちゃ。』という情熱が伝わってきます。
ソフィーのコートやジャンパースカートそしておじさんのセーターの
色のブルーが街中でも仕事場でも、とても印象に残る美しさでした。
出会えて良かった一冊です。