今昔物語絵本です。「今は昔…」で始まる数々の物語は、軽快ではあるけれど何となく抹香臭い記憶がありました。
この絵本の原型になっている権大納言も、大食らいで臆病で強欲とタイプはそのままなのでしょうが、多分説話風に書かれていたはず。
それが、ほりかわりまこさんの軽快な文章とほんわりした絵で、とてもマイルドポップなテイストにアレンジされました。
登場人物の権大納言、陰陽師と子どもにはなじみのない役どころについても説明が加えられ、違和感なく古典の世界に入っていけます。
ただ、展開はかなりぶつ切り。権大納言の性格の三点セットがつながっていないのです。この本は創作ではないので致し方ないことかと了解。
辛口で述べるよりも、子どもたちが楽しんでくれれば立派に絵本の大役を果たしたことになるのです。
欲深な権大納言は、転んでもただでは起きない性格で、谷底に落ちてもひらたけをしこたま採ってきます。それを毒キノコと取り替えてしまうあさはかさ、多分原文はこう言っているのですが、この絵本ではオチがありまません。
それが、また楽しい大納言のキャラクターでしょうか。子どもにはこちらの方が楽しい。
ひとつだけ。毒キノコを食べた陰陽師はどうして踊らなかったのでしょうか?
この問いにはちょっと困った次第です。