きつねにどんなイメージがありますか。
人を化かすというのはよく言われていますが、同じ化かす動物のタヌキの方はどちらかといえばおっとりしているような印象がありますが、きつねにはずる賢いみたいな悪い印象があるように感じます。
あのシュっとした細い顔つきがそんなイメージを生むのかもしれません。
その一方で、親子の情愛の深さを感じるのもきつねにはあります。
ぎつねのそばに子ぎつねがいる、そんな北きつねの写真などよく見かけるからでしょうか。
第8回ひろすけ童話賞(1997年)を受賞した戸田和代さんのこの作品では、そんなきつねのいいイメージがうまく表現されています。
ちなみに「ひろすけ童話賞」というのは、童話作家浜田廣介の偉業を讃えて設けられたもので2018年には第29回の賞が発表されています。
戸田さんのこの作品では可愛がっていたこぎつねを亡くしたかあさんぎつねが人間の子どもが遠くの病院に入院している母親に電話ボックスから電話をしているのを目にします。
「ぼうやがうれしいと、かあさんはいつもうれしいの」、そんな会話をこぎつねとしたことを思い出しながら、人間の子どもに自分のいなくなったこぎつねの姿を重ねるかあさんぎつね。
そういえば、かあさんぎつねは化けることができずにこぎつねをがっかりさせたこともありました。
でも、とうとうかあさんぎつねがあるものに化けることができるのです。
それは、なんと・・・。
こうして、人間の子どもを抱きしめながら、かあさんぎつねの胸に去来するのはこぎつねのこと。
しみじみと胸にしみこんでくる作品です。