4才で第二次世界大戦のため、故郷のポーランドからトルキスタンに一家は移動し、物のない厳しい生活を強いられる。その日のパンにも事欠くなかで、幼い少年の父はなぜか一枚の地図を買ってくる。
空腹に苦しむ少年は父を恨むが、壁に貼られた地図によって少年の心はまだ見ぬ外国へいざなわれ、空想の中で世界中を旅することができ…
戦争を扱った作品だが、爆撃や兵隊が出てくることはなく、庶民の暮らしが描かれる。親子は爆撃のない地方に逃げ延びるが、苦しい暮らしにあえぐ。デフォルメされた絵が、言葉以上にその苦しみや悲しみ、やるせなさ、怒りなどを語る。背景に書き込まれた人たちや風景も、戦争の愚かさを語っていて切ない。
どんな困難の中でも、想像力や楽しみを見つける力が、人をすくってくれ、夢と希望を与えてくれる。2008年に発行された絵本だが、現在の話として私は受け取った。戦争以外でもいろいろな困難がある。その時、与えられたものの中に楽しみや想像力を働かせて将来を良くしていくものが隠されていると思った。
様々な国を回る場面の、洒脱な絵が見どころ。
巻末に筆者の生い立ち・解説もあり、作品をより深く楽しめる。