1927年の当時のソビエト社会主義共和国連邦の絵本です。
何と言っても、この作品は、その生まれ出でた時代や背景を知れば知るほど、考えさせられます。
最後に訳者の松谷さやかさんのあとがきがありますが、それと並んで、ロシア文学に造詣が深い亀山郁夫さんと、絵本研究家の島多代さんの解説が添えられています。
何故かと言えば、それだけこの作品が貴重だということ。
作のウラジミール・マヤコフスキーは、ロシア未来派を代表する詩人。
1893年にグルジアに生まれ、10代の頃から革命運動に関わり、何度か逮捕され、1912年に初めての詩集『社会の趣味への平手打ち』を出版。
以後詩人として活躍し、革命後は精力的に新しい社会の建設を呼びかける創作や講演を行ったが、1930年にピストル自殺を遂げています。
絵のボリス・ウラジーミロヴィチ・ポクロフスキーについては、更に情報は乏しく、生年も諸説あり、没年も不明とのこと。
アヴァンギャルド芸術への弾圧の時代の象徴的な事実というのは、正しくその通りなのでしょう。
物語は、灯台の役割を描いたもの。
その抒情詩のような文章は、とても心地よい響きを持って、聞き手を魅了します。
また、三色刷りの絵は、どの構図も見事という他ありません。
勿論、灯台というものは、船を安全に導くものなのですが、その灯台という道標を、人々に担って欲しいという願いが込められている気がしてなりません。
最後に、
「子どもたちよ
灯台のようであれ!
くらやみで航海できない人たちのために
明かりで行く手を照らすのだ!」
と結んでいます。
それは、子どもたち、すなわち、これからの未来を担っていく者に、灯台の光のように、迷える人々の行く手を照らし出して欲しいという願いを託しているのだと思います。
混沌とした時代に、行く末を案じて、この絵本を残したのだとすれば、その崇高な思いに感動せずにいられません。
時代を超えて、この絵本と邂逅できたことに感謝したいと思います。
ただ、読み聞かせの絵本としては、一寸面白みに欠けるきらいがあるかも知れません。
大人の絵本としてオススメします。