ナンセンスという言葉を調べると、「意味がないこと、馬鹿げていること」と出てくる。
この絵本はさしずめ「馬鹿げていること」に該当するのだろうが、非難の言葉ではなく、絶賛の言葉として使いたい。
こんなことなど絶対ありえないのに、あるかもしれないと思えるほど、面白いのだ。
こんなことの第一が、「パンダ以外の入店は、固くお断りしています」なんていう銭湯があるということ。絶対ないはずなのに、いやいや、もしかしたら世界のどこかにあるかもしれないと思わせる力が、この絵本にはある。
そこでは「えいようまんてん 竹林牛乳」の「サササイダー」が売っていたり、銭湯にかかっているタイル画が富士山ではなく、パンダの故郷の中国奥地の水墨画だったりして、そんなことは絶対ないはずなのに、いやいや、もしかしてと思ってしまう可笑しさである。
さらにパンダの白黒模様。あれが洋服のようにして脱衣できるなんて誰が考えるだろう。
そんな馬鹿げたことは、いやいや、あるかもしれない。
黒い服があると百歩譲っても、目のまわりの黒い模様はどうするんだとなるにちがいない。
いやあ、あれはサングラスで、ともなれば、もう開いた口がふさがらない。
サングラスの下にはちょっと鋭い目があるしたら、ないない、そんなこと絶対ない、なんていえるか。
父と息子のパンダがこうしてお風呂にはいっていく。
待てよ、耳の黒はそのままか、とつっこみたくなりますよ、絶対。
でも、大丈夫。二人(二頭?)が頭を洗ったら、耳の黒も流されます。
なになに、耳の黒は何だったの。その説明はちゃんと最後に出てきますから、大丈夫。
こんなに楽しいナンセンス絵本にお目にかかるのは珍しい。
作者はtupera tuperaとありますが、そもそもこの名前にして意味があるのかないのかわからない。
実際は亀山達矢と中川敦子のユニット名らしい。
だとしたら、絵本界の木皿泉かとつっこみたくなる。
不思議な世界観が似ていなくもない。