普通より大判の絵本で、色彩豊かな荘厳としたイメージの「歌舞伎絵巻」シリーズです。何しろ文が橋本治さんなので、想像していた異常に面白く物語の世界を堪能できました。
(橋本さんを知らない方は、ぜひこの機会に他の本も読んでみてください。
私の世代では“春ってあけぼのよね〜”を知らない人はほとんどいないと思います。
お勧めは「桃尻語訳 枕草子」!手を出しにくかった古典文学の硬さを打ち破ってくれた作品です)
さて忠臣蔵の話に戻ります。この物語は子どもの頃よくテレビで見ていた年末のドラマや映画の「忠臣蔵」とは違います。
悪役も吉良幸上野助ではなく、“高師直(こうのもろなお)”で、最初に高師直の悪徳な言動に腹を立てていた“桃井若佐之助”がことを起こすのかと思いいや、
若佐之助の忠実な家老“加古川本蔵”が、わいろを使って主人を守ったことで、高師直のいびりは若佐之助の友人である“塩冶判官(えんやはんかん)”に向きを変え、さすがに腹に据えた“塩冶判官が上官である高師直を切り付けて……という、始まり方で、冒頭からもう、私の知っている「忠臣蔵」ではありませんでした。
もちろん大筋のところは同じなのですが、人間ドラマが半端なく、「え〜そ、そんなことがあったのかぁ」と、テレビ版では知らなかった人間関係がわかって驚きのしどうしでした。
こんなに面白いと、歌舞伎の「忠臣蔵」を見に行きたくなってしまいます。
岡田嘉夫さんの絵も半端なく美しくて、1ページ1ページ見ごたえがありました。
(これ一冊描くのにどのくらいの時間をかけられたのでしょうか?気になります)
こんなレベルの高い作品をシリーズで作ってしまう、ポプラ社さんってすごい!!と、思ってしまいました。
読み聞かせなどに使うにはちょっと難しいかもしれませんが、歴史や歌舞伎などのお芝居、古典美術に興味のある方でしたら、十分楽しめる作品です。