赤ちゃんが生まれた家に、
その少女の幸せを願って作られた一本のろうそく。
大切な時だけ灯されます。
少女を照らすたびに、すこしずつ小さくなっていって・・・
切なくても、その温かさに胸がいっぱいになる絵本でした。
あらしやこがらしのシーン、
昔、暗闇がもっと黒々としていたのを思い出しました。
私の育った地域は台風が多くて、
停電したら懐中電灯やろうそくを囲んで過ごしました。
あかりが届く範囲に家族の顔。
どこか高揚した気分で楽しかったな。
絵本で描かれるあかりは温かくて、
その風景の色合いは
私のそんな記憶も照らしてくれたのでした。
そんな忘れていた記憶も掘り起こすほど
炎の揺らぎ、温度、少女の人生、
絵本はとてもリアルに伝えてきます。
いつしか私も物語に取り込まれ、追体験しているような気分に。
そんな中、
灯台のように自分もありたいと願うろうそくは印象的です。
そうしたら どんなに この子を はげまして あげられるかしら
心からの祈りにハッとさせられます。
あかりを通して少女の一生を辿っていたら、
物語の芯は、あかり自体の生涯なのだと気づきます。
か細くても力強く少女を支え続けるその炎。
あかりが役割を終えるその時、
少女だった女性は感謝を述べます。
涙が止まりませんでした。
とても温かく少女と寄り添った一生。
儚いようなあかりは、少女の大きな存在でした。
あかりと少女、両者が歩んだ幸せな人生がとても美しい。
精いっぱい誰かのために在る尊さを知り、
思わず自分も
これまでの、そしてこれからの人生を考えてしまいました。
温かな炎を胸に、余韻がいつまでも消えません、
特別な絵本です。