桂三枝師匠の創作落語シリーズ。カラスの親が、不良息子の消息を心配する。同様に、人間の親が同じように音沙汰のない子どものことを心配する。2つの世界が交錯し、それぞれの立場の気持ちを汲み取る絵本。
関西弁の会話だけでほぼ出来上がっているお話。人の親子もカラスの親子も、似たような問題を抱え、同じような気持ちになっている。それなのに、人はカラスを差別し、カラスも人を毛嫌いする。同じ気持ちを感じることができるのに、見た目や文化の違いによっていがみ合うこの世のいろんな社会を連想させる。
三枝師匠の落語絵本は、どれも読者が身近に感じることができる笑いがあり、涙がある。感情があちこちに揺さぶられ、自分の立ち位置や気持ちを確認せざるをえなくなる。
どの年齢の人も、どの立場の人も、それぞれが感じるものや学ぶところがあると思う。いろんな人に読み味わっていただきたい作品だ。