オニがスーツを着て出勤するというユニークな設定の絵本です。主人公のオニガワラ・ケンさんは、地獄カンパニーで働く平社員。愛妻弁当を持ち、血の池地獄の見張りをする姿は、驚くほど親しみやすい日常が描かれています。
物語では、居眠りから生じる大ピンチが展開され、極楽から垂れた“糸”に亡者たちが群がる場面は、芥川龍之介の『蜘蛛の糸』を彷彿とさせますが、ユーモアたっぷりで思わずクスリと笑える内容です。
富安陽子さんの独特な発想と大島妙子さんの細やかなイラストが織りなす世界観は秀逸で、ページの隅々まで楽しめる工夫が満載。寝る前の読み聞かせより、日中の楽しい時間に親子で一緒に楽しむのがおすすめです。
大人も子どもも楽しめる、地獄のユーモラスな日常を描いた一冊です。